2008.07.16

『良心的徴兵拒否者』 ジンジン 第1回 韓国政府はいつまで彼らを刑務所に送るつもりなのか。

 韓国には国家を守る徴兵制がある。また、韓国には個人の良心の自由を守る「良心的徴兵拒否者」がいる。彼らは韓国の憲法が保障する良心の自由に基づいて徴兵を拒否する。しかし、彼らは兵役法違反の罪が問われ、2年以下の懲役が下され、刑務所に行かされる。これは、徴兵制が存在する韓国社会における深刻な人権問題であろう。

 韓国社会において、徴兵制は兵役制度としての意味を越え、人々の日常に入り込み、様々な影響を及ぼし、一つの生活様式となっている。徴兵制は男性の日常を画一的に制限する。また、徴兵の経験は暴力的な男性性を生み出す上、男性中心の社会を作り出す。このよう社会的環境の被害者である女性さえ知らないうちに軍事文化を正当化する行動をしてしまうことにより、軍事文化が広がっている。このような現実の中、良心の自由に基づく徴兵拒否者の人権は無視されている。

 「良心的兵役拒否(者)-Conscientious Object(or)」というのは宗教的、良心的思想に基づいて、軍隊での服務、または、直・間接的に戦争や武力行為に参加することを拒否する人を意味する。韓国における徴兵拒否の歴史は1950年代の事例から始まる。当時、宗教的な徴兵拒否をする人は1年以内の懲役に処された。しかし、1960年代、軍事政権が入ると、徴兵制は国家安保と結び付けられ、徴兵拒否に対する処罰は厳しくなり、5年から6年以下の懲役が下されるようになった。さらに、仏教、カトリック、プロテスタントなどの正統派宗教が支配的な宗教的環境や北朝鮮との緊張関係が続いた政治的環境の影響から、「エホバの証人」信者による徴兵拒否は「異教徒」や「赤」として扱われるようになった。このような社会的傾向より、徴兵制を疑うことは禁忌され、徴兵制はますます抵抗できない制度となった。

 しかし、2000年、南・北首脳会談などにより、北朝鮮との緊張関係が緩和されるにつれ、人権問題として、徴兵拒否運動が取あげられ始めた。この時期から、宗教的徴兵拒否者の存在が表面化し、また、宗教的な理由だけでなく、様々な理由で徴兵を拒否する良心的徴兵拒否者が世間に現れ始めた。しかし、社会的に強固な「徴兵制の神話―国家安保には徴兵が必要だ」の壁にぶつかり、徴兵拒否者の人権は無視されている。

 良心の自由に基づいて戦争や暴力を正当化する軍隊には行けないと言う彼らの権利を保障することは当然であろう。にもかかわらず、韓国政府は彼らの権利を真剣に受け取れない。このような現実を真剣に受け取ったUN人権委員会は韓国政府に良心的兵役拒否者の徴兵拒否権を認めることを勧告した。また、韓国の人権委員会も、徴兵拒否権を認めるべきだと政府に勧告した。しかし、韓国政府は動かない。これは韓国政府だけに責任があるとは言えない。徴兵拒否に抵抗感を感じる韓国人の人権に対する無知にも責任がある。逆に、今年に入った右派政権は、これまで進んできた良心的兵役拒否者に関する論議の全てを原点から論議するという、兵役拒否権の認定を拒否することを明らかにした。

 韓国政府は良心的徴兵拒否者が送る平和のメッセージに耳を傾けるべきだ。国家権力が個人の良心の自由を無視することは国家としての役割を放棄することに変わりがない。

ジンジン (PeaceMedia2008年7‐8月号掲載)
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