2006.08.24

『へいわ屋漫筆』第2回 へいわ屋読書感想文

 PM読者の皆さん、こんにちは。
暑い日々をいかが過ごされましたか?広島、長崎に赴き、追悼された方もおられるでしょう。地域の平和の集いに尽力された方も多いでしょう。夏、平和を希んで過ごされた方に敬意を表します。

 へいわ屋店主はどう過ごしていたかといいますと…。
平和グッズをぼちぼちとつくるかたわら、ひたすら本を読んでいました。ちょっと変わってるかもしれませんが、店主には、季節によって読みたくなる本があるのです。多分一番初めに出会った季節と関係しているのでしょう。

 ともかく、「へいわ屋夏の必読書」は、どうしても『火垂るの墓』はじめ、野坂昭如氏の著作ということになるのです。今年はついに野坂昭如全集を読み終えることができました。

 氏の作品は、店主にとってなぜか非常に身近に思えるのです。テーマに「戦争」をはじめとした大惨事、世代をこえた確執を扱っていても。懐かしささえ感じてしまいます。それは多分「関西人の」「リアルな」目を通して描かれているからではないでしょうか。登場人物は皆、店主の耳になじんだ関西弁を話し、ウソのない感情や行動を見せるからでしょう。
野坂氏は多作な人ですが、どの作も、例えば店主が入り込んだとしても、普通に登場人物として動いていそうな、空恐ろしいリアリズムがあります。

 でも「身近に思える」だけでこんなに引き込まれることがあるでしょうか。それをしばらく考えていて思い当たりました。店主は野坂氏の作品を読むことで、戦時を実体験してきた人の「記憶」を共有できそうだと期待してるから、なのでしょう。読めば「あの時」どんな心持だったのか、リアルに体感することができるように思うのです。

 当時若かった人、子供だった人、親だった人、老いていた人…それぞれに今の自分を重ねてしまいます。つながりや近しさを感じるのです。開戦、軍国社会への変貌、空腹、貧困、出征、別離、空襲、被爆、終戦、戦後の安堵や混乱。そういった事柄がどんな記憶として人々に刻まれたか、ひたすら知りたくて、店主は野坂氏の作品を読みに読みます。

 正直に言うと、「戦時を知らなきゃ」という義務感第一で読んでいるわけではないのです。店主は常々「私ならその時どう生きただろ」と自問しているのです。当時の二十何歳の人と、今の店主が、時空が捻れでもして出会ったら、対等に話ができるかしら。
 そうした日が来ないでもないから(笑)本の中で思う存分追体験し、頁の中で戦前戦中戦後を生きてみているのです。

(ああ、時空を捻らずとも、今なら当時の20代の人と話もできるし握手もできますね。直接戦争体験をお聴きするのも、店主は非常に有意義に思っています。)

 戦後、自らの記憶をペンに託し、蜘蛛が糸を吐くように数々の傑作を繰り述べてきた野坂氏。小学生のとき 『火垂るの墓』に出会って以来、店主はその蜘蛛の巣から離れがたいのです。そんな野坂昭如氏の作品の中から、皆さんにお勧めしたい作を挙げて、へいわ屋の夏の課題の提出としましょう。

  *  *  *

『戦争童話集』 (野坂昭如:著 中公文庫)

 野坂氏には異色の童話集です。非常に読みやすいので、子供さんも大人の方も味読していただきたい一冊です。「大人の世界」を知り尽くし、書き尽くしている野坂氏が、あえて (彼の特徴的な) 煩雑な表現をそぎ落とし、平明清澄に描いた短編集。けれども、だからこそ、胸に迫る感動がすごい。薄い一冊ですが、へいわ屋は何度も本を伏せてため息をついていました。

(C)へいわ屋 2006年8月記 (PeaceMedia2006年9-10月号掲載)
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