2006.07.28

『へいわ屋漫筆』第1回 鰻と練乳かき氷

 蒸し暑さもたけなわ。京都の夏ですね。おとろえがちな食を補うため、店主は鰻を食べに行くことになりました。繁華街の老舗鰻屋さん。
 実は店主は今まで、その築八〇年位の建物の造作や風情を見物する事に重きをおき、肝心の鰻料理に関してあまり意識をしていませんでした。不遜な事に。しかし、今回久々に訪れ、めでたく「錦糸丼」を頂いてみたら…何という滋味でしょうか!大変結構に思われました。

 以前と今回、何が違うのでしょうか。
そう、思いあたることは、「現在の私は肉体労働をしている」 ということです。以前は体を動かす事の少ない業務に就いていましたが、今は立ち放し走り放しの立派な日雇い労働者です。疲れた体は、どうやら鰻の蛋白質、しょうゆの塩分等々を欲しがるらしいのです。世の中に濃い味付を好む人が多く、そうした商品が多い理由がよくわかりました。

 同じように、以前の私はかき氷にバニラアイスや練乳をかける人の気が知れぬと思っていました。かき氷の粋は「みぞれ」につきると思っていました。それが今では毎日食べたくなるのは「練乳あずき」に他なりません。これも労働により、ハイカロリーを欲しているのでしょう。

 読者の皆さん、「何を下品な、食べ物の話か」 と仰らないで下さい。私は自分の食欲の変化により、世の労働の苛酷さを思い知りました。現在の私を含め、「働き、食べ、眠る」 くりかえしだけの生活をしている人はいかに多いことでしょう。現在の私を含め、そういう生活を送っている人たちは、平和についてじっくり考えたり、具体的な行動をとる余裕が、悲しいくらいありません。

 それでも私を含めた彼らこそは、「平和に」「幸せに」暮していくべき者ではないでしょうか。というか、「平和に」「幸せに」暮らしたいのです、私は!

 そういう生活を送っている人たちをも包む、実感可能な平和の行動、発信、提案を行いたいと、ひとしきり考えていました。 夕立を聴きつつ。

(C)へいわ屋 2006年7月記 (PeaceMedia2006年8-9月号掲載)
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