『詩の生まれる場所』 竹村正人 第2回 デモ
デモをやる意味ってあるんですか?と良く聞かれる。まっとうな質問だ。それは世の中のしくみがかわるからではないだろう。一回のデモや署名ではこの世の中はさしあたり変わらない。
それでも、僕がデモに参加する意義があると思うのは、意思表示・示威行動をするという行為そのものを歓迎するからだ。
―――成瀬
函館の海岸にたくさんのウミネコがいた。その日はとても風が強く、海も荒れていた。だけどウミネコたちは怖がりもせず、強風を利用してふわふわと空に浮く。飛ぶというより、ただふわふわと、浮く。風とつきあうのが上手だなあと感心した。
京都にいると、怖くなるほどの強風に出会うことはあまりない。台風の日くらいだろうか。だけど、なかなか風当たりは強い。様々な視線が砂に代わってビシバシと頬を打つ。もしかしたらデモは、そんな強風を利用して、ふわふわと浮いてみる場所かもしれない、とふいに思ってみた。
京都には、そんな素敵な場所をこしらえてくれる人たちがたくさんいる。そのうちの一つに、反戦と生活のための表現解放行動がある。もとは反戦反政府行動という名だったが、新しく生れた名前は、デモが生活とつながっていること、自分の存在を表現する解放の場であること、を教えてくれる。
デモに参加するとたくさんの面白い出会いがあるが、何よりも、新しい自分に出会うことができる。自分はこんな欲望を内に秘めていたのかと驚くことがある。去る7月20日には、日本自立生活センター(JCIL)が呼びかけ、すべての当事者たちが主催する「大・当事者デモ」があった。ぼくは普段あまり着ることのないワンピースを着て参加したのだが、いつもより多くの風が身体を通り抜けて心地よかった。秋には、スカートデモをやろうと思う。
ウミネコだって最初から上手に浮かべたわけじゃない。少しずつ、自分も仲間も、そして世界も、変わってゆく。だからぼくは、怖いくらいの強風が吹いていても、ふわふわと浮ぶ新しい自分に、わくわくするのだ。
浮かべ
青い空にふりきって
浮かべ大丈夫
ぼくがいる(竹村正人「ふわふわの雲」)
*冒頭は「反戦生活」のブログから、文末は竹村のノートから、それぞれ引用。
反戦生活 http://d.hatena.ne.jp/posada/
日本自立生活センター http://www.jcil.jp/
Tags: デモ・ピースウォーク・パレード, メディア, 反戦生活, 路上
Trackback URL
Comment & Trackback
Comment feed
Comment