2009.07.18

『詩の生まれる場所』 竹村正人 第9回 就活

〈人間〉はつねに加害者のなかから生まれる。被害者のなかからは生まれない。人間が自己を最終的に加害者として承認する場所は、人間が自己を人間として、ひとつの危機として認識しはじめる場所である。
―――石原吉郎

 経済不況、歓迎だ。だが貧困のもたらす受動的な紐帯が自由を保証するわけではない。被害者意識から抜け出すためには貧乏人として生きること、いわば紐を結び直す能動的な契機が必要だ。

 貧乏人とは、あくせく働いて消費することの虚しさに気づいた者であり、収入の高低は関係ない。われらはともすれば他人を出し抜く競争に励んでしまうが、反貧困も外国人排除になっては意味がない。被害と加害は流動的だ。

 逆に金持ちも貧乏人になりうるし、敵の土俵もお祭り広場にできる。それには六本木ヒルズを鍋会場にするようなまぬけさが必要だ。「高学歴ワーキングプア」だって連呼すれば「高学歴ワーキングパワ」になる。君も加害者になる就活なんてさっさとやめて履歴書を便所にしてしまおう。

氏名
うんこ
生年月日
うんこ
現住所
うんこ
電話番号
うんこ(うんこ)うんこ
学歴
うんこ
職歴
一貫してうんこ畑を歩んできた。
免許
うんこ
資格
うんこ
得意な学科
うんこ
特技
うんこ
スポーツ
うんこ
趣味
うんこ
志望の動機
うんこ
希望条件等
うんこ
家族
うんこ
以上

     (安里健「私の履歴書」)

*冒頭は『石原吉郎詩文集』(講談社文芸文庫、2005)より、
文末は安里健『詩的唯物論神髄』(スペース伽耶、2002)より、それぞれ引用。

竹村正人 (PeaceMedia2009年8-9月号掲載)
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