2007.12.20

かげもん 『京都というまちを考える試み。』第9回 
京都精華大学での学費ハンスト

 京都精華大学で、学費値上げ反対を訴えるハンストが行われた。
「京都新聞」にも(2007年)12月6日(朝刊)に載った。ハンストをしたのは精華大学の学生一名(以下ハンスト学生)で、12月5日午後、ハンストを開始した。精華大学の食堂にへばりつくように、単管を骨組みにした小屋がかけられ、中にはタタミ、コタツ、テレビが置かれ、そして日当たりのよいテラスまであるという、立派な住空間がつくられた。私も小屋に訪れてコタツに入りながらマンガを読んだりしたが、真冬の精華大学(京都市の北端)とは思えないほど温かかった。

 ハンスト学生は、一週間以上にわたり、その小屋でバイトと授業以外の時間を生活した。ほぼ毎日発行された「ハンスト新聞」によると「駅から50秒、食堂へは徒歩0秒、通学時間0秒という抜群の条件の良さとひきかえに、もはや日本ではあたりまえになったプライバシーと言うがいねんを全てとっぱらった革新的なデザイン」であり、「外からはゴミ袋ごしに、食堂からは全てが丸見えにな」っている(「ハンスト新聞」12月5日)。ちなみに「ハンスト新聞」はすべて手書きで書かれており、精華大学の経営の状況や、世界的な学費無償化の流れ(日本は国連人権委員会から「学費が高すぎる」と勧告を受けている。同じ勧告を受けている国はルワンダとマダガスカルだけである)、あるいはハンスト学生の食べたいものなど、非常に豊かな紙面である。

 精華大学は芸術系3学部と人文学部で成り立つ大学である。その精華大学で2008年度入学生の学費値上げが決定された(在学生は据え置き)。しかも在学生には休学費の大幅な値下げというエサとともに新入生から値上げするということは、学費値上げ反対運動を警戒してのことだろうか。

 値上げ額は、デザイン学部とマンガ学部が7万ほど上がり、175万9000円(初年度)に、芸術学部が173万円に、人文学部は据え置きということである。年間170万円も払える学生はほぼいないし、もし親が金持ちじゃなかったとしたら、バイト掛け持ちなどで、授業や勉強や製作どころではない。生活費にさえ追われるような学生には「学問の自由」の元で学問することはできないし、ある種のモラトリアム期間を過ごすことも不可能である。多くの学生が生活の次元でいっぱいいっぱいになっている。私自身学生であるのだが、周囲の人の恵みがなかったら相当苦しい生活をしていると思う。そんな中での学費値上げは、人道的にもやってはならない行為のひとつと言えるし、ここまで学費が高額になっている状況は「学費=霊感商法」とも言えるだろう。

 ハンストが始まって数日間、なんの進展も無かった。つまり、精華大学の理事会(理事長は京都で有名な中尾ハジメである!)はハンストを無視し続けたわけである。いちおう精華大学は結構いい理念を持っているのだが、理事会が学費の話し合いをしようとしないとは、精華大学によいイメージを持っている方は疑問に思われるだろう。
ハンストが始まって一週間が経とうとした11日夜、ハンスト学生を含めた学生数名が、理事会に押しかけた。詳しい議論は知らないが、なんと13日の昼休みに精華大学の食堂前で野外説明会が開かれることになった。ハンスト中には学費値下げを求める署名が集められ、200筆近い署名が集まった。

 私も13日の説明会にかけつけた。
ハンストを支持する無記名のビラが精華大学のあちこちに貼られていた。なんだかんだ言って昼休みは人が多い。ハンスト学生たちが丁重に用意したテントに理事会の人たちが座る。マイクの音が響きわたり、説明会がはじまる。理事会の人たちは何度も「在学生の学費はあがらない」と、集まってくる学生に対して繰り返した。

 しかし、学生の立場から見ると、これから入ってくる新入生と一緒に大学という空間を作り出していくのだから、自分の学費に関係ないからといって、一緒に大学で何かを生産する仲間の生活を破壊するような学費値上げは、断じて許されるものではない。レトリックだけの回答を繰り返す理事会に対して学生から野次が飛ぶ。騒ぎが大きくなりはじめる。精華大学の広場に学生が立ち止まる。昼の授業がはじまっても、その場に人は留まる。そして空間は、野外団交の様相を帯び、映画に出てきそうな場となる。ずっと黙っていた「学生部長」を名乗る教員がいきなりハンスト学生に向かって
「昼休みって約束だろ!授業時間中じゃないか!メシを食え!」
と殴りかかろうとした。そして、理事会の人間から
「ハンストは卑怯だ」という言葉が飛び出した。場が騒然とした。超合法的行為のハンストがなぜ卑怯なのだろうか?そもそも話し合いをずっと持ってこなかった理事会は卑怯ではないのだろうか。もしハンスト学生の体調に何か起これば「自己責任」とか言うのだろうか。

 野外説明会では、学費値上げを撤回させることはできなかった。
そもそも10年以上に渡って学費値上げがなされなかった精華大学において、なぜ今学費値上げなのかということを、理事会は説明することができなかった。「説明責任を充分に果たしたとは言えない」という、学生をなめた発言も飛び出した。経営の失敗があったから、その尻拭いを新入生にさせているという学生からの指摘に対し、理事会は学生に経営の資料を見せず、ただ「経営は失敗していない」と言い張るのみだった。この点に関しては「中長期経営計画の公開」が理事会と学生の間で確約された。また、次回もし値上げを検討することがあれば、学生の生活状態を調査し、事前に話し合うことが約束された。そして、奨学金の増額も約束された。

 ハンストはその日で終わった。
学費値上げ撤回を引き出すことはできなかったが、精華大学では野外団交が可能であるという前例をつくったことは非常に大きい。ハンスト学生は6キロも体重が減った。しかし事件ははじまったばかりである。

(C)かげもん 2007年12月記 (PeaceMedia2008年3-4月号掲載)
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