2009.03.14

『へいわ屋漫筆』第21回 冬から春へ

 「頬を刺す、朝の山手通り。タバコの空き箱を捨てる…」という詞で始まる、椎名林檎さんの歌(*1)がありました。語法が何かヘンと思いつつも、鮮やかに景色が伝わるので印象に残っている歌です。こんな「頬を刺す」ような冷気は、いつの間にか消え、もう春ですね。昨夜物干し台に上ると夜気がやわらかく感じられました。かすかな沈丁花の香が、その柔軟剤の役を果たしているのでした。

 自然界の寒さは解けても、人の世界の冷気は暖かい心で温めるほかありませんね。
 プチ派遣切りと言ったら大げさでしょうか。へいわ屋店主も突然の「1週間分の仕事の白紙化」を経験しました。これで一番思い知ったのは、金銭の不安もさることながら、築けていた信頼関係が一瞬で崩れるのがとてもこたえる、ということでした。仕事キャンセルを店主に伝えた現場の社員の人も、言いにくそうにしていました。世に増え続けている失業者の人たちも、金銭面の次に、この精神面での喪失感に苦しむのだろうとわかりました。

 あてどない1週間を送ることになった店主は、せめて新しいへいわグッズの開発でもしようと、資料を探すうち、少し面白い記事を見つけました。例によって古書店で入手。

『主婦之友 花嫁講座 實用手藝と染色』(昭和15年刊)

 可憐な装丁と「~なさいませ。」といった床しい書き方の本文が微笑ましく、また友禅染や造花製作法まで紹介された、たくましくもある1冊なのです。
 この本の1部に「童謡人形 仲良し」と題する人形の作例がありました。日中洋の3少女が仲良く肩を組んで歌っている様子の人形です。(図版参照)

『主婦之友 花嫁講座 實用手藝と染色』(昭和15年刊)

 名前も和子ちゃん、支那子ちゃん、洋子ちゃんとつけてあります。
(支那子ちゃん、私なら華子ちゃんとでも名付けるでしょうか。)
 昭和15年といえば、日中戦争が膠着し、翌年に太平洋戦争開戦をひかえた、戦時色いよいよ濃厚な時期ですが、この人形制作の指南、瀧澤詩津男氏は世界友好のロマンをもっていたのでしょうか。人形作家らしい優しい目線のように思えます。章の前書きに「可愛いお人形の存在は家庭の平和を護り、云々」と、和を良しとする文もあり、どんな人なのか気になるところです。銃後の少女や妻たちの、束の間の憩いに参加したような気分になる書物でした。

 こんな風に、試作や研究で日を過ごしていた店主に、静岡のIさんから手紙が届きました。Iさんは関東を中心に9条Tシャツを販売する「へいわ商会」さんの代表(*2)で、店主とは旧知の仲。(へいわ屋の他にも居るんですよ、こういう人!)
 最近、運転の腕前を活かして、やりがいある仕事に就いたこと、新しい9条Tシャツのいいアイデアが浮かんでいる事。嬉しいお便りでした。
 近いうちに、東西へいわグッズ屋の共同制作などが出来れば楽しいですね。PM読者の皆さんも楽しみにしていて下さい。

 *  *  *

【編集者註】
(*1) 歌詞引用は「罪と罰」作詞・作曲:椎名林檎より
(*2) 関連ブログ 「NICE NINE 憲法9条Tシャツ」
http://article9shirts.osakazine.net/

へいわ屋 2009年3月記 (PeaceMedia2009年3-4月号掲載)
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